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2024年05月14日

インド消費者物価(24年4月)~4月のCPI上昇率は僅かに低下、11カ月ぶりの水準に

経済研究部 准主任研究員 斉藤 誠

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インド統計・計画実施省が5月13日に公表した消費者物価指数(以下、CPI)によると、24年4月のCPI上昇率は前年同月比4.8%と、前月の同4.9%から僅かに低下(図表1)、事前の市場予想1(同4.8%)と一致する結果だった。

地域別の上昇率をみると、都市部は前年同月比4.1%となり、前月から横ばいの結果だったが、農村部は同5.4%(前月:同5.5%)と小幅に低下した。

4月のCPIの内訳をみると、燃料・電力とコアCPIがそれぞれ低下した。

まず高止まりが続く食品は前年同月比8.7%(前月:同8.5%)と小幅に上昇した(図表2)。食品のうち、価格変動の大きい野菜(同27.8%)は大幅な増加が続いた。野菜価格は昨年7-8月に高騰した後、9-10月に一旦低下したが、11月以降は再び高騰している。インドでは日常的に必須な野菜とされるタマネギの価格が前月比▲4.4%と下落したものの、ジャガイモとトマトの価格はそれぞれ同19.4%、同1.9%と上昇した。野菜のほか、豆類(前年同月比16.8%)や穀物製品(同8.6%)の価格が高止まりしたほか、肉・魚(同8.2%)と果物(同5.2%)が上昇した。一方、食用油(同▲9.4%)の価格下落が続いたほか、香辛料(同7.8%)が鈍化、牛乳・乳製品(同3.0%)と加工食品(同3.5%)が落ち着いた値動きとなった。

燃料・電力は前年同月比▲4.2%となり、前月の同▲3.4%から更に低下した。

コアCPI(食品、燃料を除く総合)は前年同月比3.2%と、前月から横ばいで、過去最低水準で推移している。教育(同4.2%)や衣服・靴(同2.9%)、住宅(同2.7%)、家庭用品・サービス(同2.7%)、娯楽(同2.6%)、輸送・通信(同1.1%)など幅広い品目が3月の水準を下回った。一方、パーソナルケア(同7.4%)は前月から上昇した。
(図表1)消費者物価上昇率/(図表2)食品価格指数の要因分解
(図表3)消費者物価上昇とインフレ目標 4月のCPI上昇率は僅かに低下し、11カ月ぶりの低水準になったが、未だインド準備銀行(RBI)の物価目標の中央値である4%を上回って推移している(図表3)。インド準備銀行(RBI)の金融政策委員会(MPC)は主要政策金利を7回連続で据え置き、タカ派的な政策スタンスを維持しているが、インフレ率がピークを過ぎて低下傾向にあるという楽観的な見方を示しており、今後はハト派的な政策転換が見込まれる。もっとも今回のCPIの結果はインフレの低下がごく緩やかであるため、RBIが6月の会合で政策転換するとは考えにくい。これまでの金融引き締め策によりコアインフレは低水準にあるが、食品価格の高騰が続いているため、政策転換は食品インフレの低下を待って判断する可能性が高い。

食品インフレの高騰は昨年7月から始まったため、今年7月以降はベース効果により食品インフレが低下するとみられる。またインド気象局(IMD)は今年のモンスーン期(6~9月)の降雨量が全国的に「平年を上回る」との見通しを発表しており、10月以降の収穫期には食品インフレの更なる低下が期待される。今年は3~5月の熱波の発生が例年を上回るとみられており、食品価格の高騰が続く恐れがあるほか、地政学的リスクの高まりによる油価上昇といった不確実性が残るが、今年後半には利下げが実施されると予想する。
 
1 Bloomberg集計の中央値。
 
 

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経済研究部   准主任研究員

斉藤 誠 (さいとう まこと)

研究・専門分野
東南アジア経済、インド経済

経歴
  • 【職歴】
     2008年 日本生命保険相互会社入社
     2012年 ニッセイ基礎研究所へ
     2014年 アジア新興国の経済調査を担当
     2018年8月より現職

(2024年05月14日「経済・金融フラッシュ」)

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